生涯剣道

長田 克巳先生

第17回は地元調布生まれ調布育ちで現在は調布市剣道連盟・会長の長田先生です。
長田先生は長年中学校の教師として、また、赴任された中学校の部活で剣道部を指導育成する等、中学生の知力・体力向上に教育指導者として活躍されております。

1. 剣道を始めたのは何歳ごろですか?、動機は何でしたか?

 小学校2年生から剣道を始めました。小さい頃から外で遊ぶことが大好きで、近所のガキ大将以下仲間同士で日が暮れるまで遊んでいました。
コマまわし、メンコ、野球などで遊んでいましたが身体を動かすことが好きで、近所のともだちと一緒に剣道を始めました。
両親も何かスポーツをやらせたいと思っていたのでしょう。当時は調布と言えば少年野球リトルリーグが盛んでしたが、なんとなく剣道を選んだと思います。

2. その頃の剣道具や稽古法、稽古内容は現在と違いますか?

 剣道具は今とさほど変わりませんが、面布団や小手の打突部位等薄っぺらいものでした。
初心者の稽古は1年間剣道具を付けずに剣道着と袴で素振りや打ち込み等基本を中心に行っていました。ちなみに稽古場所は調布公民館の1階でした。現在の南口バスロータリー付近にたたずんでいました。床はコンクリートでとても剣道をする環境とは言い難い所でした。

3. 子供の頃の稽古量はどうでしたか?、現在と比べて違いますか?

 稽古日数は水、土の週2回でした。稽古するというよりもそこでいろいろな友達に会える楽しみの方が大きかったです。ただ、小学校の高学年になるにつれ試合にも出るようになり、ますます稽古をするようになりました。明大前の中心会という稽古会にも参加しました。

4. やめたいと思ったことありますか?、続けられた要因は何ですか?

 剣道をやめたいと思ったことはありません。学生時代も勝ちに拘るプレッシャーをあまり感じなかったからかもしれません。

剣道を続けている最大の要因は剣道の持つ美しさを追い求めることができるからです。心で攻め克ち、打ち込めば、剣さばき、体さばきに美しさが伴います。この美を永遠に追究できることが剣道を続けている要因と言えます。相手が100人いれば100通りの攻め方があります。攻めて相手が崩れる所を打ち込むことができるか、この点が難しいけれども魅力があります。そして剣道は年を重ねてもその年代に応じた剣道ができます。大人として成長した心をどのように剣に活かすか、この点も興味深いものがあるのです。

5. 得意技は何ですか?、また稽古で心掛けていることは何ですか?

 小手打ちが得意です。表からの飛び込み小手、裏からの飛び込み小手、払い小手、かつぎ小手、出ばな小手、相手の竹刀を表から抑え押し返してきた所を小手を打つ等数多くの小手打ちを体得しています。

稽古の中で工夫していること
 小手打ちの場合相手との攻防の中で相手の竹刀の握りがしっかりしているか、手元が浮くか、手首を柔らかく使っているか等、判断します。その判断の元、次の5点を念頭に置き、相手の小手を狙います。
①手首を柔らかく
②体勢を崩さない(左足の引きつけ) 
③充実した気勢
④気で攻める
⑤一拍子の打突

6. 忘れられない一本があったなら、それについて教えてください

 小手抜き面
平成19年8月、福岡県で行われた七段昇段審査にての小手抜き面が忘れられません。
あのときを振り返ると、審査時間は2分少々の中で中盤にさしかかり相手と一進一退を繰り返していました。無心で攻めて相手が小手に来たところを抜いて面にいった一撃が忘れられません。捨てきった打ちでした。相手の面へ確かな手応えを感じ打突の音が耳に残りました。その後は相手が焦って出てきたところを出ばな小手にいきました。この一本は相手を引き出した絶妙な技でした。こうして過去最低の合格率(5.4%)であった福岡七段審査会にて難関を突破することができました。

7. 大きな影響を受けた先生や恩師と慕う先生について教えてください

 折口築先生 剣道教士七段 元信州大学教授 
 高校時代の剣道部顧問、東京教育大学の大学院生で私の通っている高校の体育の非常勤講師でした。非常に厳しい先生でしたが、心優しい方で、生徒一人ひとりのことをよく考えてくださいました。教育大OBの顧問の先生方を通してよく練習試合を企画してくださいました。また、よく稽古をつけてくださり、たいへん厳しい稽古でした。なかでも夏休みの合宿での稽古は良い思い出です。
先生はまっすぐな剣道をされ、誤魔化さない真の剣道を教え込まれた気がします。その気持ちが今の私の剣道に対する考え方になっています。先日、数十年ぶりに稽古をお願いし、当時の想いが蘇ってきました。前向きに懸かる稽古ができたいへん気持ちの良い汗をかくことができました。

 渡邊博先生 剣道教士七段 元日本大学第二高校剣道部顧問
 豪快な先生で杉並区剣道連盟会長、杉並中学剣道指導者講習会会長をお務めになりました。
私が教員になり、剣道部の顧問を引き受けた当時、渡邉先生から「指導者としての剣道を身につけなさい、杉中剣に来なさい。」と言われ、杉中剣の門をたたきました。それから剣道に対する姿勢が変わりました。
心優しい先生はプライベートでもたいへんお世話になりました。片男波部屋の後援会長もされていた関係で大相撲の平成17年9月場所溜席で先生と一緒に大相撲観戦をしたことが忘れられません。そして、その足で片男波部屋を訪れ親方はじめ玉春日関や玉の島関とちゃんこ鍋に舌鼓を打ったことが昨日のように思い出されます。

8. 座右の銘があれば教えてください

 「下がらない。」
 私がいつも稽古で心がけている言葉です。気で負けていると身体に出ます。攻められて下がってしまいます。そうならないようにいつも充実した気勢で姿勢を崩さず先を取る心で稽古するように心がけています。左足の引きつけをいつも忘れないようにしています。

9. 是非お勧め!という本があれば紹介してください

 「武士道」 新渡戸稲造 著
 「五輪書」 宮本武蔵 著

10. 最後に子供達へのメッセージをお願いします

 一、日頃の稽古を大切にする。
 一、大きな声を出す。
 一、先生の教えを守る。
 一,仲間を大切にする。