生涯剣道

今泉 錠惠先生

第4回目は大町剣道クラブを育て、長くご指導に携わっててこられた今泉錠恵先生にお願いして、ご寄稿頂きました。
若い人への思いを込められて、礼法の大切さと、充実した気合の大切さが説かれております。

 「芸は身を助ける」という諺がある。
私の剣道は、芸というにはほど遠いが、これ以外に何もない唯一何とかなる、と思っているのが剣道である。
私が、剣道ができなかったら「ダルマさん」です。家の中でゴロゴロしているだけの哀れな老人であったであろうと思う。

 おかげさまで警察官として、在職中に剣道の指導を受け、一応の体験を積んでいたことが、ダルマさんに手足を与えて呉れたのです。 22年前のことです。 それは昭和58年4月、私が定年退職の直後です。
大町剣道クラブが発足したのです。指導者として仲間として、地域の方々と交流する機会が与えられたのです。

 以来、調布剣道連盟の皆さんとも剣友という名のもとに、親しくご交誼いただき今日に至っております。
剣道を通じて多数の方々とお知り合いとなり、また、剣道によって地域の青少年の健全育成に少しでも役立てたことは、本当に「芸が身を助けた」ことになる、と思っています。

 「剣道は気合である」ということ。
剣道は「礼に始まり礼に終わる」と言われている。 私は具体的にその中心を明らかにしておきたい。
「礼に始まり、(力一杯やったら)礼に終わる」と。
剣道の稽古は、大きな声で、元気良く、気合を込めて、短時間に、一心不乱やるものと信じている。 最近、充実した素晴らしい気合の持ち主が少ない。 技術の進歩に応じて、(段位にふさわしい)気合が求められている所以である。

 剣道には、「気・剣・体」一致という鉄則がある。
また、三殺法の教えの中に、相手の「気を殺す。刀を殺す。技を殺す。」とある。 気の抜けた稽古をするものは、真剣に稽古をする人の邪魔になるばかりでなく、怪我を誘うことがある。 見学・退場など指示することが必要である。