生涯剣道

内木 倍男先生

記念すべき第10回となる今回は、30年聖武会でご指導いただいています内木先生にお願いしました。
内木先生の子供達へ対する思いをお読みください。

1.剣道を始められたのは何歳の時ですか?またその動機はなんでしたか?

昭和34年、中学1年生の秋ごろと記憶しています。当時新設校で顧問の先生はいらしても、剣道の直接の指導者がおらず、市内在住の大学生に頼んで指導を受けていました。とにかく熱血漢の大学生先生で、10人くらいの部員で頑張っているのを見て入部しました。

2.その頃の稽古法や稽古内容を教えてください。

新設校のため、まだ体育館もなく、練習前にグラウンドの石を取り除くことから始め、足袋を履いての稽古でした。(現在2つも体育館が有るなんて!!)
稽古は、基本、基本とうるさく言われ、正しい構え、足捌きでの切り返しの連続でした。発声は特に注意を受けました。(仲々声が出なくて)早く防具を着けたいと思っても着けさせてもらえず、半年くらいして漸く着用を許されました。とても感激した事を思い出します。

3.剣道をやめたいと思われた時期はありましたか?

幸いに指導をしてくださった先生方に恵まれたのだと思いますが、色々アドバイスを頂きながら中学、高校、大学(剣道一直線では有りませんでした)と続けることができました。就職をして13年のブランクが有りましたが長男が小学校に入学と同時に一緒に剣道を始め、もう30年になります。

4.忘れられない一本はありますか。

観点は一寸違いますが、25~6年前、あまり意欲の見られない、お子さんがいました。親御さんの意向が強く本人は剣道に余り興味を持てなかったのでしょう。色々試行錯誤して指導しますが一向に上達しませんでしたが、ある時面打ちをさせると、突然今までになかった大きな声で、素晴らしい一本を打ってきました。私は驚くと同時に素晴らしい一本だったということを大袈裟なくらいに褒めてあげました。以後そのお子さんは練習を休むこともなくなり積極的に取り組むよう変わっていきました。この一本に私自身がうまく対処してあげられなかったらそのお子さんの剣道とのかかわりは無くなっていたかもしれません。この件で、子供を指導するということの意味が多少分かった様に思いました。指導者として続けて来られた一つの出来事と思っております。

5.恩師と慕う先生はどのような先生ですか。

始める切っ掛けを作って下さった熱血漢の大学生が1番の恩師と思っていますが、学生時代指導してくださった全ての先生方(特別著名な先生方はおりませんでしたが)に感謝しています。
この年令迄剣道にかかわってこられたのは先生方のおかげと思っています。

6.稽古の中で特に工夫されていることを教えてください。

子供たちの指導が主の会ですので、剣道を習うことについての、心の持ち方を繰り返し繰り返し教えるようにしています。基本稽古は勿論の事ですが、子供たちの様子を見ながら、気持ちが折れそうになっているか、居ないかを早く見つけて、壁を乗り越えられるように、精神的な事にも目を向けるようにしています。

7.「座右の銘」を教えてください。

聖武会25周年を記念して手拭を作製した時に、書家の瀬川緑雨先生にお願いをして、私の好きな言葉『一期一会』を書いて頂きました。茶道、仏教で多少の解釈の違いはありますが、子供たちのこれから先、良い出会いが沢山有りますようにとの願いを込めて。

8.剣道関連の好きな本をご紹介ください。

剣道関連の本はあまり読みませんが、10年ほど前に森島健男先生の『神の心剣の心』という書を読み、少年指導の参考とさせていただいてます。

9.最後に今の調布の子供たちにメッセージをお願いします。

『継続は力なり』どのようなスポーツも苦しさの中で味わう喜びを体現してほしい、それには続けて行く事が大切と思います。続けて来て良かったと思えるような事を見つけてください。