生涯剣道

内藤 常男先生

 第20回は内藤先生です。内藤先生は現在、全剣連の常任理事・東剣連の副会長専務理事などの要職を務められる傍ら、週末は稽古に勤しんでおられます。また、会社社長として企業経営にも前向きに取り組まれ、法人も一つの人と捉えれば会社の支柱である自分が常に前向きなら、社内の雰囲気も高まるとの信念のもと、剣道で培われた気のエネルギーで社業発展に活動されており、多忙な毎日を過ごされておられます。

1. 剣道を始めたのは何歳ごろですか?、動機は何でしたか?

 中学校のときからです。子供の頃赤胴鈴之助の漫画で剣道にあこがれていて、体育のかっこいい先生が剣道部の顧問だったことも動機です。

2. その頃の剣道具や稽古法、稽古内容は現在と違いますか?

 竹胴を使ってました、稽古着も昔風のものでした。 先生をなかなか打てなくて体育館の隅に追いやられたり、追い込まれて体育館につるされているネットに巻き付けられたりして、それでも悔しくて泣きじゃくりながら先生にかかっていきました。いい思い出です。 その体育の先生は、元々器械体操の専門家でしたが剣道もやっておられご指導いただきました。先生はその後画家になられご活躍、いま80歳でお元気に活動されています。70歳で剣道を復活されて78歳で七段とられました。先日50年ぶりにその先生と稽古をお願いする機会に恵まれました。
中学1年のときの剣道部の写真です。(1962年昭和37年)右端が私。真ん中は中学校近所の理髪店店主が剣道好きでいつも稽古にきてくれていました。

3. 子供の頃の稽古量はどうでしたか?、現在と比べて違いますか?

 中学校の部活でしたので、週3回、1回は1時間半くらいでした。

4. やめたいと思ったことありますか?、続けられた要因は何ですか?

 社会人になって仕事が忙しくてなかなか時間がとれないことはありませんでしたが、やめたいと思ったことはありませんでした。高校、大学のときの剣道の先生たちから剣道はずっと続けていきなさい、いつかきっと良かったと思うから言われてそれを信じて続けてきました。 先生たちのそのおことばは間違いなかったことをいま実感しています。

5. 得意技は何ですか?、また稽古で心掛けていることは何ですか?

 シニアになってきて、筋力が衰えてきてます。 そんなとき、身体の構造をよく考え、重力を活用するような、よくいわれる理合いにそった剣道を意識し始めました。もっと若い時から、力とスピードに頼るだけではなくこうしたことを意識して稽古していればと反省しています。身体能力は劣化の一途ですが、それを補う理合い、柔らかさで稽古していると剣道は本当に楽しいと実感してきています。

6. 忘れられない一本があったなら、それについて教えてください

 試合をしていて1本とったときを振り返るとあまりこうしよう、ああしようとか考えていないで力を程よく抜いていて姿勢がよくて、相手に臆することがなく向かっている時が多いと思います。そのためには、普段からいろいろと考えて工夫しながらいろいろな技をやっていることが大切と思うようになりました。 加えて、試合で1本とられたときは必ずなにかわけがあると最近は思うようになりました。そのわけを一つ一つつぶしていくのも剣道の楽しさと思うようになりました。

7. 大きな影響を受けた先生や恩師と慕う先生について教えてください

 大学のときの剣道部師範、範士九段の中倉清先生。 中倉先生は昭和の武蔵と異名されて戦前から戦後にかけて抜群の強さと実績を残され、また70-80代の高齢になられても全日本優勝者クラスを寄せ付けない強さを誇っておられました。中倉先生から大学、その後社会人になっても剣道にまた人生の師としてもいろいろご指導をいただきました。 会社に勤めていたころ、若いときに、先生から会社でも周りの人たちに自分から挨拶しなさい、家でも家族といいコミュニケーションをとりなさい、そしたら剣道は強くなるよと教えられました。そんな簡単なことかと思い、すぐ実践しました。ところがそれを毎日やることは大変です。しかし、それが剣道でいう自然体、平常心ということとあとでわかりました。 そうしたら、剣道も強くなってきて、会社でも仕事をたくさん任されるようになりました。

8. 座右の銘があれば教えてください

 明るく、楽しい剣道をやること。 そうでないと自分で考えた剣道はできません。面を打つときは自分で考えて自分で感じたその瞬間に打つわけで、人から言われて打つものでありません。普段から自分でよく考えながら稽古していかないと剣道は強くならないと思います。そのためには、明るく楽しい剣道をすることです。

9. 是非お勧め!という本があれば紹介してください

 私の剣道の師匠、中倉清先生と並んで戦前、戦後にかけて強さを誇った羽賀準一先生といわれる剣豪がいました。 中倉清先生、羽賀準一準一先生、もう一人中島五郎蔵先生は、戦前の神道無念流・有信館道場の三羽烏といわれて各種大会で勝ち誇っていました。三羽烏のおひとり、羽賀準一先生が、書き残していることばに、剣道が強くなるには、3つの大切なことがあるといっています。 一番目がよい師匠を持つこと、二番目がよい昔の武術書を読むこと、三番目がよい稽古仲間を持つことといっています。たしかに、昔の武術書は命のやりとりをしていくぎりぎりの中で術理を説いているので説得力があるのではと思います。 幼少年の剣士たちには読みにくいかもしれませんが、読めるようになったらおすすめは、宮本武蔵『五輪書』、柳生宗矩『兵法家伝書』佚斎樗山『猫の妙術』『天狗芸術論』などがおすすめではと思います。

10. 最後に子供達へのメッセージをお願いします

 剣道を楽しみながら続けてください! そして、生涯剣道をめざしてください。