生涯剣道

山川 晴也先生

第1回は山川晴也先生(中央剣道会会長・教士七段)にお願いいたしました。山川先生は学生時代には箱根駅伝に参加されて、足腰を鍛えられました。その成果は40歳から再開された剣道の足跡に現れておりますが、上達の要諦はこの本文の中に現れているように思われます。

「中年からの剣道」

私の中学・高校時代は戦後その筋の達しにより(GHQ占領政策)と云うことで、柔剣道が禁止され、剣道とは全く無縁の時代だったので、専ら走ることに専念していました。

 剣道に再会したのは大学の授業でした。 小学3・4年生の頃まで父に連れられ剣道をやっていたので、一端経験者のつもりでやっていましたが、恐らく剣道になっていなかったと思います。

 教師になり、剣道部の顧問を任され、何年か経ち、指導者として自身の資質を高める必要性を感じ、一念発起したのが40歳でした。 体力的には少々自身があったものの、基立ちの先生方に掛かるとすぐ息が上がってしまう。 この余計な動きと力が抜けるのにかなりの年月を要しました(いや現在もまだ抜けていないかもしれない)。

 地元剣連の先生方や高体連剣道部の先生方の、親切な時には厳しいご指導を頂き続けているうちに、少しずつ剣道のことが理解できる様になり、現在まで続けることが出来ました。

 剣道では60歳はまだヒヨッコだと聞かされていましたが、70歳を過ぎた今でもまだヒヨッコだと思っています。 剣道は頂点がなく生涯が修業の道だと云うことをつくずく感じる様になりました。

 剣道ほど若い人達と身体を張って息長く出来るものは他の競技には無いと思います。 その意味では剣道を通じて良き師、良き剣友と出会い、素直に教わることの大切さを学び、何よりも素直に聴く耳を持ち、常に基本に忠実な稽古を心掛けることが大切なことだと思います。

 「打とう、打たれまい」「打った、打たれた」だけに拘った剣道は、剣道の本質を見失うものであることが少し分かってきた様に思います。